2015年7月|聖カピタニオ女子高等学校|豊かな人間性を持つために

「2015年07月」の記事

抱え込まないで!

 7月10日(金)放課後、薬物乱用防止教室が開かれました。講師は、岐阜ダルク(薬物依存症患者の社会復帰を支援するNPO法人)のお二人の方にお話していただきました。お二人が薬物に手を出すまでのお話を伺いながら、他人事ではないような気がしました。陽子さんの両親は仕事が忙しく、親に「一人ぼっちは寂しい」と言えなかったことから、他人に自分の気持ちを正直に言えず、徐々に心も開けなくなってきたそうです。

?                                      「人に嫌われるのが怖くて平気なフリをし、私は大丈夫と言い聞かせながら自分が何をしたいのかわからず、誰にも相談できないまま自分で抱え込んでしまいました。甘いものを食べたらほっとしたのでたくさん食べはじめ、体重は80kg になりました。こんな自分が見苦しくて、ひきこもり状態になり、体重を落とすために、今度は過酷なダイエットをしてしまいました。そして、高校3年生の時に先輩から勧められアルコールに手を出し、食べなくても済む自分に気づき徐々にアルコール依存症になっていきました。そんな時好きな男性が現れ、彼に普通の薬局で売っている薬を飲むと楽になると言われ、今度は薬を大量に飲みはじめました。そして今度は薬物を勧められ、薬を買うためにお金がいる、自分の将来はどうなってもよくなってきて、体を売ってお金を稼ぎ、そのお金で薬を買うという状態になってきました。好きで薬を使っているから病気とは思わなかった。」と言っていらっしゃいました。

 「心身ともにぼろぼろになり精神科に入院したが、現実を見たくなく、自分がどうしたいのか、何をしたいのかが分からず、挙句の果てに、病院から出される薬のコントロールができず病気が悪化。そして彼に振られたことも重なり自殺未遂。精神科のドクターからも治せないと言われた。そして行き着いたところは、自分と同じ境遇の人たちの岐阜ダルクだった。そこで、規則正しい生活と自分の気持ちを正直に言う努力をして、今では自分の悩みを正直に言えたり、喧嘩もできるようになった。言葉は大事で、自分の気持ちを人に伝えることの大切さに気づかされた。自分が何をしたいのか、一回限りの人生を後悔しないように一生懸命に生きていきたいと思えるようになった。」と話してくださいました。

 もう一人の方は、岐阜ダルクに来て4か月。陽子さんと似た生活を送っていらっしゃたお話を、時には涙を流しながら私たちに話してくださいました。現在自分の弱さから逃げないように仲間と共にリハビリを行っていらっしゃいます。

 

 生徒たちの感想を抜粋します。

*実際に薬物依存症になってしまった方のお話が聞けて、とても貴重な時間でした。緊張してうまく話せないとおっしゃっていましたが、だからこそ一言一言が重く、苦しみがより伝わってきました。お二人とも最初から薬物を乱用していたわけではなく、初めは食べ物の暴食だったとお話していました。私たちの身の回りには、食事、携帯、買い物、賭け事など様々な依存症が隠れています。そういったものから些細なきっかけで、薬物に走ってしまう可能性があることが分かり、とても恐ろしく感じました。そして、自分の欲望をコントロールすることの大切さを学びました。(1年生)

*薬物乱用は他人事だと思っていたのですが、今日の講演を聞いて、実はそうではないのかもしれないと気づかされました。薬物乱用になるきっかけが、とても身近にあることが分かり、考え方が変わりました。コンプレックスなどが原因で悩まされ、辛い日々を過ごしている時に好きな人ができて、その人から薬を勧められ、断ると嫌われるのが嫌で1回ぐらいなら・・・・って私も思ってしまうような気がしました。「自分が自分でいられる場所を失いたくないからやる。」こういうことなのかなぁと思いました。こう考えるとやってしまう気持ちも分かってくるような気もしますが、結局自分を更に傷つける事になるので、自分が自分でいられる正しい場所を見つけるために、薬物乱用を断る勇気って大切だなと思いました。(2年生)

*今日、お話をしてくださった一人の方が初めは市販の薬をたくさん飲んでいたと聞いた時に、「薬物乱用」の意味を考えさせられました。「薬物」と言われると違法の物を一番に思い浮かべましたが、そうではないと思いました。市販のものだから安心し使用量を間違えると、逆に体へ害を与えるものだという意識の薄れが表われているとも感じました。そして乱用がエスカレートしていくにつれ、自分ではもうどうにもできなくなっていくという怖さを改めて感じました。薬物乱用をし始める理由がどんなことであっても、悩みを相談し、一日でも早くやめれるようにすべきだし、周りの人で悩んでいるのでは?と思った時に勇気をもって声をかけてあげることのできる人になりたいと思いました。私一人にできることは小さなことかもしれないけれど、一人でも多くの人が悩みを抱え込まずに打ち明けられる社会になればいいと思いました。(3年生)

 

 陽子さんが最後に「依存症は病気だから、その人に出会ったら巻き込まれるので、ダルクのようなリハビリ施設へ行くように言ってあげてください。」という言葉を聞きながら、これから先、○○依存症の人たちが増えていくのではないかと心配になりました。それは、人間関係が希薄になり直接相談することもできず、悩みを自分で抱えてしまう傾向があるように思ったからです。人間は人との関わりで、自分が自分になっていきます。私が私になれないほど辛いことはないと思います。薬物防止について小学校から警察官の方からお話を聞いていた生徒たちも、実際に体験した方のお話を聞く機会に驚いていました。お二人の辛い過去を話してくださったことに生徒たちは感謝し、悩みを相談することの大切さや自分の気持ちを言葉で表現することの大切さを再確認した時間になったようです。

 

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