「2014年09月」の記事
学園祭を終えて
9月13日(土)、14日(日)に、本校のメインイベントである学園祭を無事に開催することができました。今年の学園祭テーマは、「carità?未来へつなぐ3.11?」という東日本大震災についてのものでした。昨年度までと打って変わって具体的で、そして難しいテーマでした。このテーマにした理由は過去の記事に書いてありますのでぜひお読みください。
その学園祭の2日間を生徒会の視点から振り返ってみたいと思います。まず一日目は午前の生徒会企画(講演会)と、午後の部・同好会・有志発表によって構成されていました。毎年、生徒会企画では、その年の学園祭テーマにふさわしい方をお呼びして講演会を行っています。今年のテーマである東日本大震災について、お話をしてくださる方を生徒会メンバー、先生、シスターで考えていたところ、今回のテーマにふさわしい方に来ていただけることになりました。私たちがお呼びしたのは、実際に石巻市で被災された、現在大学生の阿部春香さんです。春香さんは、私たち生徒会が東北研修で訪れて交流させていただいた仙台白百合学園高校の卒業生でもあります。本校の3年生の生徒の友人ということもあり、今回の講演を春香さんにしていただくことになりました。時折涙を流しながらも、高校生だった当時の被災地の状況、避難所での様子を思い出しながら一生懸命に話してくださった春香さんの講演は、聞いていて私たちも涙を流さずにはいられませんでした。とくに春香さんが近所に住んでいた知り合いとの死に直面したという場面では、津波の恐ろしさは言うまでもなく、あと一歩で助かったのにという悔しさや津波への憤りをも感じました。改めて天災の前では人間は無力なのだということ、そしていかに備えが必要かということを思い知らされました。数か月前に行った事前の打ち合わせでは話しきれなかったこともたくさん話してくださいました。本当にすばらしい講演で、生徒の心にも深く印象に残ったことと思います。このテーマにして春香さんを講演にお呼びできて良かったと心から思いました。
午後からは軽音楽部、シンフォニア同好会、コーロアンジェリコ(合唱部)、ダンス同好会、有志グループが、舞台で日々の練習の成果を発表してくれました。震災復興ソングを演奏するなど、テーマに関連した発表も見られました。また、ダンス同好会や有志グループは毎年クオリティがどんどん上がっており、とても見ごたえのある発表で、会場にいる生徒や先生、見に来てくださった卒業生や保護者の方も一緒に盛り上がり、とても楽しめました。午前はしっかりと学び、午後からは盛り上がった調和の取れた学園祭一日目でした。
続いて二日目は、一般公開日となっていて、模擬店や展示などのクラス企画とフィナーレであるファッションショーによって構成されていました。クラス企画では、各クラスが何ヶ月も前から考えてくれていた企画で、学校は大盛り上がり!どのクラスも3.11という難しいテーマながらも、それぞれのクラスの視点から個性的に展開してくれました。私たち生徒会は、企画書の段階から携わっていて、正直最初は不安になってしまう企画もあったのですが、第二稿、第三稿…と重ねるうちに、見違えるようにすてきな企画へと変化していきました。そういう過程を見ていたからこそ、全クラスを回っていて感動しました。学校全体が3.11について取り組んでいたから生まれた統一感は忘れられませんし、今までの学園祭には感じられなかったものでした。この統一感が生まれたのは、こんなに難しいテーマにも、一生懸命考えて取り組んでくれた全校生徒の努力のおかげだと思いました。本当に感謝です。
そして本校の学園祭の目玉イベントであるファッションショーも、3.11に関連した衣装と演出で発表して頂きました。本校のファッションショーの特徴は、ただ衣装を着てモデルウォークをするだけではなくて、そのテーマに沿って衣装や演出を考え、クラスで約5分のひとつの物語や世界観を表現するというところです。どのクラスも3.11をテーマにしていたのですが、それぞれのクラスの個性でいろいろな方向に展開され、衣装や演出にもその個性が光っていました。真っ白な企画書から作り上げられた衣装、そして動作や表情の一つ一つにはすべて意味があって、非常にメッセージ性のある、舞台から目を離すことができないくらい観客を引き付けるファッションショーでした。
そしてそのファッションショーのあと、つまり学園祭の最後に、本校史上初の試みを行いました。それは、「会場にいる全員で歌を歌う」というものです。生徒や先生方シスター方はもちろん、一般のお客様や中学生も含めて全員で、東北への祈りを込めて、NHKの公式復興ソング『花は咲く』を歌いました。私は生徒会長として指揮をさせていただきました。舞台の上から、会場中の方が一生懸命歌ってくれている姿を見て、とても感動しました。今回の学園祭にふさわしい、素晴らしいエンディングで二日間を締めくくることができ、本当にうれしかったです。
今回の学園祭を通して、全校で東日本大震災について学ぶことができました。企画の段階で震災について調べていくうちに新たな知識を手に入れたり、改めて震災について深く考えたり、仲間と意見を交わすことができたりと、またとない良い機会になったと思います。被災された方の講演を聞くことも、めったにない貴重な経験になったと思います。私自身この学園祭を作り上げる期間で、今まであまり深く考えてこなかった震災について、多くのことを学べました。このように知識を深め、その知識を家族や友人と共有することによって、近い将来に起こるであろう南海トラフなどの地震の被害を減らすことができると思います。今回の学園祭に来て下さった方は、ぜひ感想や考えたことなどを身の回りの方と共有していただけたら幸いです。
このように今年度の学園祭を大成功させることができたのも、全校生徒、先生方、シスター方、そしてお忙しい中本校の学園祭にお越しくださったみなさんのおかげです。本当にありがとうございました。
聖カピタニオ女子高等学校 生徒会長 光岡佑梨
東日本大震災被災地を巡って
第一回のブログにも書かせていただきましたが、私たち生徒会は今年の学園祭で東日本大震災をテーマに掲げています。学園祭を企画していくにあたって現地の状況を知り、被災された方の体験談を聞くことが重要だと考え、今年の3月に、宮城県へ3日間視察に行ってきました。校内での報告会は行ったのですが、今回はその報告を書かせていただきます。
まず一日目。初日は語り部タクシーに乗って、石巻、閖上などの被災地を巡りました。なかでも印象深かったのは大川小学校です。地震発生から約50分の間に避難するかしないか躊躇していたところを津波に襲われたという小学校です。
児童の中には、近くの山に避難しようと提案する子もいたようですが、その意見は反映されず、避難していれば助かったはずの多くの命が、津波によって失われてしまいました。一方で、「釜石の奇跡」と呼ばれるように、日ごろの訓練のおかげで全員無事に津波から避難することができた学校もあります。このことから避難訓練の大切さ、自然の力を甘く見てはいけないということを学びました。また、この日の夜には、あしなが育英会が震災によって親を亡くした子供たちのために建てた施設「レインボーハウス」を訪問しました。震災孤児となった子供たちが集い、ファシリテーターと呼ばれるあしなが育英会のスタッフと遊んだり、お菓子を食べたり、体を動かしたりする施設です。建物を見学させていただき、様々な部屋がありました。どの部屋もかわいらしく、部屋と目的によってイメージカラーが決められていました。例えばみんなでおしゃべりする部屋は、お互いの顔を見て話せるように部屋が丸くなっていて、緑で統一されていて落ち着く雰囲気。思いっきり体を動かす部屋は壁も床も赤で、けがをしないように柔らかい素材でできていました。中央にはボクシングのサンドバッグがあったりして、思う存分にストレスを発散できる部屋になっていました。そのような工夫が施されたたくさんの部屋、体育館、キッチン、休憩所、屋上に作られた星を眺めることができる人工芝の広場などがありました。
そして、校外での街頭募金や校内の募金活動でみなさんにご協力していただいた15万円を、責任を持ってお渡ししてきました。
? この募金は、震災孤児の心のケアのために役立てていただきます。震災によって親を亡くし、心に深い傷を負った子供たちはたくさんいます。そんな子どもたちの心のケアが必要不可欠であると、担当の方のお話を伺って強く感じました。無意識のうちに、周りの大人たちに心配をかけないようにふるまっている子どもたちが、思いっきり泣いたり、心の奥にしまいこんだ悲しみや恐怖を安心して言葉にしたりすることができる場所が必要とされているのです。復興が進む中で、こうした心の傷は建物ほど簡単に元通りになることはないのだと痛感しました。一日でもはやく心の底から笑えるようになったらいいと願っています。
? 二日目。二日目には実際に地震や津波を体験した方々のお話を聞く機会を設けてもらいました。市議会議員さんや、実際に被災地で救助活動をしていた消防士さん、津波から奇跡的に逃れることができた当時の高校生から、とても貴重なお話を聞かせていただきました。
当時高校生だった方は、地震発生後に自転車で帰宅している途中、目の前の歩道橋の上に立っていた自衛隊の人から「津波が来るから急いでこの歩道橋にのぼれ!」と叫ばれて、初めはわけがわかりませんでしたが乗っていた自転車を乗り捨てて急いで歩道橋へ駆け上がりました。するとその直後に、音もせず静かに水がサーッと歩道橋の下に流れてきたそうです。水位はどんどん増していき、歩道橋のすぐ下まで津波が流れていたそうです。その方は本当に危機一髪で助かったのです。このようにたったひとつの行動が生死を分けてしまいます。緊急時にこそ冷静で適切な判断が求められるのだと強く感じました。
津波の被害が大きかった閖上地区の中学校には、地震が起こった時刻である2時46分でちょうど止まっている時計があり、震災が実際にここで起こったのだという事実を静かに、しかし強く、私たちに語りかけていました。また、津波で亡くなった生徒のための石碑が設置されており、そこに遺族の方から亡くなった生徒へのメッセージが書いてありました。そのメッセージを読んでいて涙を流さずにはいられませんでした。
亡くなった方はもちろんですが、残された家族も同じように深い悲しみを抱えているのだ、そしてこの先もずっとその悲しみを抱えて生きていくのだ、と胸が苦しくなりました。
? 三日目。最終日には仙台市内にあるカトリックの女子高、仙台白百合学園高等学校の生徒会のみなさんと交流をさせていただきました。総勢12名の生徒会役員の中には、津波で家が流されたという方もいました。当時の状況を詳しく説明していただき、これからの被災地の復興について、また原発問題についても話し合うことができました。
私たちと同じ学年でしたが、やはり震災に対する思いがとても強く、南海トラフについても心配してくださっていました。震災を経験した同世代の子と意見を交わすことができ、とても大きな刺激となりました。私たちが用意したアンケートにも事前に協力していただき、優しく暖かい方々でした。これからも生徒会を通して、交流を続けていけたら素敵だと思います。
? 三日間の研修を経て、実際に被災地を訪れたり、現地の方のお話を聞いたりして、私たちは多くのことを学びました。出会った方みなさんが口を揃えておっしゃっていたのは「震災を忘れないでほしい。忘れられることが怖い。」ということでした。大きな被害が出てしまった東日本大震災ですが、月日が流れるにつれて私たちの中から確実にその存在は小さくなってきています。本校では毎月11日に被災者のためのお祈りをしていますが、このような機会がなければ震災を思い出すことはないのではないでしょうか。そのことを東北の方も心配していたのです。被災地でも少しずつ復興が進んでいますが、被害の大きかった地域や福島では、いまだに避難所生活を強いられている人が多くいます。「自分たちの経験を教訓にして活かしてほしい。そして私たちの住む地域に同じような地震が起こったときに、少しでも悲しい思いをする人が減ってほしい。同じような思いをしてほしくない。」そう話してくださった方たちのためにも、私たちは3.11を忘れてはなりません。
私たちは今年の学園祭でこの「Carità?未来へつなぐ3.11?」というテーマを掲げ、全校で取り組んでいきます。どの学校でもできる催しではなく、カピタニオにしかできない学園祭を企画していきたいと考えています。「ただ楽しむだけでなく、来てくださった方に何かを訴え、何かを感じてもらえる学園祭」、「カピタニオから校外へ、発信していける学園祭」を全校で一丸となって一緒に作り上げていきます!!