人間性って何だろう? ―令和8年度第64回入学式―
2026.04.11


 

令和8年4月7日(火)、入学式を行いました。校庭の桜は少し前に満開になり見頃を過ぎていましたが、グラウンドの桜は入学式まで待っていたかのように満開を迎えました。あいにくの雨模様で、式中は本降りとなる時間もありましたが、それでも幸い、式が始まる前までなんとか天気が持ち、終わった後もすっと雨が上がり、登下校に大きな影響はなく良かったです。以下は、入学式に私が述べた式辞を以下に載せます。新入生に向けての私のメッセージです。

 

入学式式辞

 

新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。今日から高校生活が始まります。それに当たって高校生活について少し考えてみましょう。学校教育法などの法令をごく大まかに要約すれば、高校は、中学校までの義務教育をさらに発展させ、人間性を養い、教養を高める場所、特に普通科は、幅広い教科を学び、将来の進路を考える基礎を作るのを目標としています。

このうち今日は「高校は人間性を養う場所」という点に絞ってお話しします。「人間性」というキーワードは現在、特に注目されています。これからもさらに重要となるでしょう。いわゆる「AI」が人間の肩代わりをすることが急速に増え、人間にしかできないことは何か、延いては「人間とは何か?」がますます問われるようになったからです。一言で「人間性を養う」と言うのは簡単ですが、まず「人間性とは何か」という問いから出発する必要があります。皆さんは「人間性(人間らしさ)」とはどういうことだと思いますか?

 

一般的に使われるAI(人工知能)という言葉を、専門家の間では「機械学習」と呼ぶそうです。その学習は人間の学習の仕方とは異なっています。人間特有の学習は「記号接地」と言い、情報を現実世界の経験と結びつけて理解しますが、AIはすべてを数値化し、統計的に学習する方法を取ります。例えば「苺」に関して、AIは人間をはるかに越える膨大な知識を持っています。しかし、AIは苺を実体験として見たことも触ったことも味わったこともありません。本当に理解しているわけではなく理解した「ふり」をしていると言っても過言ではありません。

現実の世界を肌で経験し感じて、考え理解できること、それが現時点では人間にしかできない、人間性の一つだと言えるでしょう。美しいものに感動したり、悲しい現実に心を痛めたり、それについてもっと知りたい、探究したい、自分に何ができるかを考える。デカルトという哲学者は「我思うゆえに我あり」と言っています。自分の心で「感じ」、自分の頭で「考える」から人間なのです。高校生活においても、授業や行事、部活などを通して、そういった力を養ってください。

 

また「人間」という漢字は「人(ヒト)」に「間(あいだ)」と書きます。ヒトは生物としての存在、「間」という字を加えた「人間」は社会の関係性の中で生きる存在を示すのだと思います。ダイヤモンドがダイヤモンドでしか磨けないように人は人の間で磨かれ成長します。学校はまさに友人と切磋琢磨する場所です。周りの人と助け合い、高め合い、うまく付き合う力を培ってください。

 

今のところ、AIには人間のような感情はないとされています。「喜び」や幸福感を感じることができるのも人間特有のものです。それに関連した達成感や自己肯定感、やる気、粘り強さなど数値化できない力を引っくるめて「非認知能力」と言います。こうした力も高校時代に培ってほしいと思います。そのために重要だと私が思う二つのポイントを最後にお話しします。一つは出会いを大切にして、できるだけ多くのことにチャレンジしてみること。食わず嫌いということもよくあります。今の自分の世界を飛び出して未知の世界に触れると思いがけない発見があり、世界が広がります。苦手科目も避けずに取り組んでください。「幅広く学ぶ」ことは「普通科」のメリットでもあります。

もう一つは、「幅広く」と言ったばかりですが、濃淡を付けて、自分が好きなことや得意なことに特に力を入れること。教科でも部活でも趣味でもいいです。「一芸は道に通ずる」という言葉があります。一つのことを極めるプロセスで得られる、様々な経験や能力は、他の分野や人生全般にも生かせるという意味です。何かに全力を傾ける中での成功や失敗の体験を通して、達成感や困難を乗り越える力、問題解決の方法などが身に付きます。

 

以上、AIのような文明の利器の力を借りながらも、このような人間の強みを磨き、人間らしく自分らしく生きる力をつけることが「人間性を養うこと」だと私は思います。世界的な生物学者レイチェル・カーソンは「子どもたちがいま生きている世界の美しさや不思議さに心を開く感受性を身につけるためには、子どもたちとその感動を分かち合う大人の仲間が必要です。」と言っています。そんな存在でありたいと私たちは思っています。また今日、皆さんの入学を歌で祝い、エールを送るために来てくれた先輩たちもいます。高校3年間が充実したものとなるよう、一緒にがんばりましょう。

ようこそ、カピタニオへ。

令和8年4月7日 聖カピタニオ女子高等学校 校長 村手元樹