パンジー @マリア像前の花壇
◇『星の王子さま』の全体構成◇
ではいよいよ『星の王子さま』の中身に触れていきます。まず全体構成を確認しておきましょう。①「ぼく」の操縦する飛行機が砂漠で不時着をし、一人しか住めない小さな星から地球にやってきた幼い王子さまと出会う、②王子さまの、これまでのさまざまな体験談を「ぼく」が聞く、③王子さまと「ぼく」が砂漠で別れる、というのが大きな枠組みです。「ぼく」はおそらく実際に砂漠に不時着した経験があるサン=テグジュペリがモデルです。
◇本当に大切なことは目に見えない◇
後半にこのメッセージは明確に示されます。他の星でいろいろな経験をした後、地球に来た王子さまが一匹のキツネと会います。このキツネが言います。「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目にみえないんだよ。」(内藤濯訳、以下同様)「目に映る現象」だけではなく、「心の目」で見ないといけないことを教わるのです。このキツネと王子さまの一連の場面が、私の一番好きな、本当にいい場面なのですが、いわゆるネタバレになるので、ここまでにしておきます。
◇目に見えるものより 目に見えないものを◇
さて、こういった考え方は聖書の中にもあります。「コリント人への第二の手紙」の中に次のような一節があります(4章18節)
「私たちは、見えるものにではなく、見えないものにこそ目を留めます。見えるものは一時的であり、見えないものはいつまでも続くからです。」*
目に見えない大切なものというと、どのようなものを思い浮かべますか。例えば愛とか友情とか思いやりとか、自分を幸せな気持ちにしてくれる、本当に大切なものは目に見えないですよね。そして「思いやり」は箱の中身を透視するように、相手の見えない心の中を想像することです。もちろん生きていくためには目に見える物質的な豊かさが、ある程度必要です。しかしそれだけでは幸せにはなれない。目に見えないものをイメージする心の豊かさがなければ。(つづく)
校長 村手元樹
*「コリント人への第二の手紙」・・・『新約聖書』に収められている書簡。使徒パウロがコリントの教会に宛てて書いた手紙の一つ。
📙読書の手引き📙 「心の目で見る」とはどういうことか、物語を通して考えてみよう。