◇この夏、感じたこと◇
おはようございます。夏休みもあと2週間となりました。このあと、2学期に向けてのいろいろな準備もありますが、2学期のスタートに向けてしっかり鋭気を養ってください。また、これからも厳しい残暑が予想されます。引き続き、体調管理にも十分気をつけてください。
さて、皆さんは、どんな休日を過ごしているでしょうか。それぞれに、日々いろいろなことがあり、感じること、考えることも多いと思います。私がこの夏に感じたことの一部を少しだけお話ししたいと思います。
◇戦後80年◇
毎年、この時期になると、太平洋戦争に関する報道が行なわれ、平和や命の大切さについて考える機会となります。今年は特に戦後80年の節目の年ということで、各メディアでたくさんの特集が組まれていました。やはり、記憶を継承していくことが重要であることを改めて感じます。「権力によって忘却を強いられるとき、民衆が抵抗する唯一の道は“記憶”することだ。」というミラン・クンデラの言葉が思い出されます。
この夏、広島・長崎への原爆投下に関して、アメリカの調査会社がアメリカの成人に行なった調査によると、「正当でなかった」と考える人の割合が35%、「正当でなかった」が31%、「わからない」が33%という結果でした。これを年代別にみると、若い世代になるほど「正当でなかった」と考える人が増えていることがわかります。伝えていくことの重要性がよく分かります。日本各地でも、夏に平和を考える機会が多く設けられています。大分県の小中学校では、毎年8月6日を出校日として様々な平和学習を行なっているそうです。
◇朝ドラ『あんぱん』◇
私は、朝ドラを見る習慣がありますが、現在、放映されているのが「あんぱん」というドラマです。「アンパンマン」の作者の「やなせたかし」さんと「のぶ」さん夫妻をモデルにしたドラマです。やなせさんのことをもっと知りたくなり、『アンパンマンの遺書』(岩波現代新書、2013)という本も読みました。兵士としての戦争体験を持つ「やなせ」さんの平和を願う思いが、アンパンマンに投影されていることを知りました。
当時の日本では、正義のあり方が、戦争の前後で180度変わってしまいました。時代や社会や国が変わっても逆転しない正義とは何か、やなせさんは考えます。その思いが、正義のヒーロー、アンパンマンの原点となります。やなせさんは、こう言っています。「逆転しない正義とは献身と愛だ。それも決して大げさなことではなく、眼の前で餓死しそうな人がいるとすれば、その人に一片のパンを与えること。」これが戦後のやなせさんの根本思想となります。
◇賜物(たまもの)◇
朝ドラ『あんぱん』の主題歌はRADWIMPSの「賜物」という曲です。主人公の生き方を本当によく歌い込んでくれているなと思う、とても味わい深い、よい曲です。「賜物」とは「[神様とか王様とかから]いただいたもの。恵みとして与えられたもの。」という意味です。ここでは、私たちに与えられた命ということでしょうか。戦争を体験した方は、こんな気持ちで戦後を生きた方も多いようです。生き残った自分は、たまたま救わて、命が与えられて、誰かが生きられなかった今日を生きている感覚です。この曲を作った野田さんが、NHKのインタビューで「いちばん最後のサビに、自分が『あんぱん』というドラマに出会って、この曲を書いた、自分なりの一つの結論がある」と語っていたので、その部分を紹介します。
「時が来ればお返しする命 この借り物を (中略) せっかくだから 唯一で無二の詰め合わせにして返すとしよう あわよくばもう 「いらない、あげる」なんて 呆れて 笑われるくらいの命を生きよう」一度聴いてみてください。ちなみにアンパンマンの主な受容年齢は乳幼児だそうですが、園児たちがよく歌う、アンパンマンのマーチもよく聴くと、哲学的で深いですね。「たとえ胸の傷が痛んでも」という部分には、人生の悲しみにも眼を背けず、前向きに生きてほしいという、やなせさんの思いが覗えます。
ではまだまだ報告したいことがたくさんありますが、お時間が来てしまいました。残りの夏休み、健康に気をつけて過ごしてください。お話は以上です。
校長 村手元樹
*2025.8.21 出校日全校朝礼(オンライン)