花衝羽根空木(ハナツクバネウツギ)、本校舎まわりの生垣
◇知恵の言葉「Let it be」◇
おはようございます。9月のテーマは「清い心-ありのままを受け止める」です。「ありのままに」とか「あるがままに」という言葉をよく使いますが、どういうことか今ひとつイメージが漠然としているので、少し膨らませてみたいと思います。
皆さんは「Let it be」という曲を知っていますか? 伝説のロックバンド、ビートルズの名曲です。タイトルの「Let it be」は訳すとまさに「ありのままに受け入れる」という意味です。この曲の歌詞はシンプルだけど心に染みます。こんなふうに始まります。“When I find myself in times of trouble” (私が苦難に陥った時)、“Mother Mary comes to me” (聖母マリア様が私のところに現れ)、“Speaking words of wisdom” (知恵の言葉を授けてくれる)、“Let it be” (あるがままを受け入れなさい)
◇受胎告知の場面のマリア様◇
マリア様は英訳の聖書の中でも「Let it be」と言っています。(訳し方によっては別の表現になりますが。)ルカによる福音書の中の、いわゆる「受胎告知」という箇所です。多くの画家たちも好んで描いている有名な場面です。ガブリエルという天使が突然、マリア様のもとに現れて「あなたは間もなく男の子を身籠ります。名前をイエスと名付けます。」と言う。その時、マリア様は「Let it be」(正確には「Let it be to me according to your word.」)と答えます。ここでは「神様のみ言葉のままを受け入れます。」という意味でしょうか。
◇「ケセラセラ」と「なんくるないさ」◇
「ありのままに」と同じような意味の言葉は、古今東西にいろいろあって、知恵の言葉として用いられています。例えば「ケセラセラ」という言葉がありますが、これは「なるようになる」「成り行きに身を任せる」というような意味のようです。沖縄の方言の「なんくるないさ」という言葉もそうです。
しかし、ここで考えたいのは、これらの言葉は、あるがままに任せて「そのままでいい」「何もしない」ということではないと思います。「なんくるないさ」という沖縄の言葉は、もともとは「まくとぅそーけー なんくるないさ」と使う言葉で、「まくとぅそーけー」(誠実に努力していれば)、自然となんとかなる、神様があなたをよい方向に導いてくれますよ」という意味だそうです。漢文で言うと「人事を尽くして天命を待つ」ということです。
◇ニーバーの祈り◇
最後に今お話ししたことのまとめとして「ニーバーの祈り」というごく短い祈りをぜひ皆さんに紹介したいと思います。英語の詩ですが、Sr.渡辺和子の著書(『渡辺和子著作集Ⅴ』1988、山陽新聞社)にシスターが日本語に訳されたものが載っていますので、それを読みます。
「主よ、変えられないものを受け容れる心の静けさと、変えられるものを変える勇気と、その両方を見分ける英知を我に与え給え」
Sr.渡辺和子の説明も読みます。「生きていくうえには、受け取るよりほかに、どうしようもないことに遭遇することがあります。その時に、それを心静かに受け容れてください。しかしながら、同時に、努力をすれば変えられるものも生きていくうえにはあります。その時には、どうぞ、勇気を持って変えていってください。そしてたいせつなのは、なにが変えられることで、なにが変えられないものかを見極める英知を、祈り求めて生きることです。」
「主よ、変えられないものを受け容れる心の静けさと、変えられるものを変える勇気と、その両方を見分ける英知を我に与え給え」
校長 村手元樹
*2025.9.18 全校朝礼