【朝礼の話㊼】「情けは人のためならず」の深い意味
2026.07.19

紫陽花@宗教情操センター前

 

◇情けは人のためならず◇

 おはようございます。6月のテーマ「思いやり」について、私の考えを少しだけお話しします。皆さんは「情けは人のためならず」という日本のことわざを知っていますか? ずいぶん古くから使われていることわざで、『太平記』という室町時代の古典作品にも出てきます。

 このことわざの意味を間違って捉えている人も多くて、「情けをかける」つまり人に親切にすると、その人のためにならない、その人が自分の力で対処するべきであって、あまり親切にしないほうがいい、というふうに解釈している人もいます。

 

◇社会は助け合いで成り立っている◇

 これはまったくの誤解で、本当の意味は、「人に親切にすることはその人のためではなく、自分のためですよ」という意味です。何で自分のためかというと、まず考えられるのは、親切な人は周りからも信頼され、自分も親切にしてもらえるということです。

 でも人は、電車で席を譲ったり、道で落とし物を拾ってあげたり、もう二度と会わないだろうと思われる、見ず知らずの人にも親切にします。なので、この諺の本当に言いたいことは、人に親切にすると、回りまわって、いつか自分に返って来るよね、社会はそういう助け合いで成り立っている、そういう社会でありたいという願いが無意識に働いていると思います。

 

◇思いやりは健康にもいい◇

 ところで私はこの諺をもう一歩深い意味で捉えることもできると思います。たとえ自分に返って来なくても、人に親切な行動をすること自体が自分の喜びになる。何か人の役に立てたなとかと繋がっているなとか、心地よい気持ちになります。

 思いやり行動は健康との関連性が高いという研究もあります。思いやりは体にもいいということです。

◇いい親切はいい風のよう◇

 毎年、修学旅行の最後に長崎の教会でお話をしていただく西神父様が、「いい親切は、いい風のようなものだ」とおっしゃっています。いい風は、「ああ気持ちいい」と思った瞬間、もう吹き過ぎていて既に遠くの木の枝を揺らしている。いい親切も、お礼を言う時にはもうその人の姿はもうないという具合です。

 そういう意味で私が一番「粋な親切」と思うものがあります。エレベーターで見知らぬ人同士が何人か乗り合わせた時に、自分だけその階で降りる時に、手を伸ばして、さりげなく「閉じる」ボタンを押していく人がいます。そうすると、たった数秒ですが、残っている人の待ち時間が減ります。「親切だな」と思った時には扉が閉まって、もうその人はいない。

 「カッコイイ」と思い、私もチャンスがあれば、そうするよう心掛けているのですが、なかなか難しい。なぜならエレベーターの「開く」「閉じる」のボタンは、二つの正三角形のとがった部分が内向きなのが「閉じる」、外向きなのが「開く」で結構紛らわしいんですね。私はいつも、どっちがどっちだったかなと一瞬迷ってしまいます。降りる時、間違って「開く」ボタンを押してしまうと、とてもダサい。「何がしたいんだろう、この人。」「いじわる?」ということになってしまいます。

 あと、「乗ります。」と言って駆け込んでくる人がいた時、「開く」を押してあげると「親切」なんですが、間違って「閉じる」を押してしまうと「いじわるな人」みたいになるんですね。エレベーターの親切は「親切」か「いじわる」か紙一重なんです。

 ということで皆さんも「愛の実践」を心がけてください。

 

校長 村手元樹

*2026.6.25 全校朝礼