【おすすめBOOK④】サン=テグジュペリ『星の王子さま』―紹介その1
2022.06.10

つまごいの赤いバラ

修養会の時、つま恋に咲いていた赤いバラの花です。

◇人類必読の書◇

 「人類必読の書」と言うと大げさかもしれませんが、そのくらいおススメという意味です。人生で一度は手に取ってほしい本です。『星の王子さま』は今から80年ほど前、1943年に出版され、その後も読み継がれ、300以上の国と地域に翻訳され、発行部数は2億冊を超えるそうです。テーマは一言で言うと「愛」。「愛って何だろう?」ということを考えさせてくれます。キリスト教の考え方が根底に流れていますので、カトリックの「愛」の精神を肌で感じるのにも最良の本です。童話の形をとり、対象年齢は小学生からとなっていますが、たぶん小学生には深い部分は分からないと思います。その疑問を抱えながら、じっくり読んでは考え、長い時間をかけて何度も読み直していく、いわゆるスロー・リーディングに適した本です。

◇サン=テグジュペリと内藤濯◇

 作者のサン=テグジュペリはフランスの作家です。生まれた年は何と1900年。覚えやすいですね。彼は作家であると同時にパイロットでした。飛行機と言っても旅客機ではなく、一人乗りのもので、郵便物を運んでいました。第二次世界大戦では偵察機に乗り、1944年上空で消息を絶ち、還らぬ人となってしまいました。飛行機乗りだったことは彼の文学に大きな影響を与えていると思います。地上を俯瞰(ふかん・・・全体を上から見ること)する習慣は、肝心なことを見落としがちな人間社会を客観的に捉え直す目を養いました。

 この作品は1954年、内藤濯(あろう)さんによって翻訳されました。名訳もさることながら、『星の王子さま』という邦題をつけたのは大きな功績です。原題の『Le Petit Prince』の直訳『小さな王子さま』だったら日本でこれほど有名にならなかったかもしれません。『赤毛のアン』なども同様ですが、邦題はその作品のその後の運命を左右します。

◇王子さまの赤い花◇

 『星の王子さま』の全体構成は、①「ぼく」の操縦する飛行機が砂漠で不時着をし、一人しか住めない小さな星から地球にやってきた幼い王子さまと出会う、②王子さまの、これまでのさまざまな体験談を「ぼく」が聞く、③王子さまと「ぼく」が砂漠で別れる、というのが大きな枠組みです。「ぼく」はサンテグ=ジュペリがモデルです。彼は実際に砂漠に不時着した経験があります。

 王子さまの体験談の主旋律は、王子さまの赤い花への思いです。どこかから飛んできたトゲのある、たった一輪の赤い花です。最初はその花の美しさが誇らしく幸せだったのですが、花の、プライドが高く、わがままな言動に嫌気がさすようになります。赤い花は擬人化されていて、喋ったり、あくびをしたり、咳をしたりするんですね。何しろ童話ですから。やれ水をくれだの、風よけの衝立を立てろだの、気むずかしい態度で王子さまに接します。いわゆる「ツンデレ」です。花のことを思う自分のやさしい気持ちが花に通じず、愛に傷ついた王子さまは自分の星を飛び出してしまいました。王子さまはその時のことを振り返って「ぼく」にこう言います。

   「ぼくは、あんまり小さかったから、あの花を愛する

    ってことが、わからなかったんだ」

◇愛を学ぶ旅◇

 王子さまは星を飛び出し、放浪の旅に出るのですが、それは結局「愛とは何か」を学ぶ旅だったと思います。六つの星を巡り、最後地球にやってくるのですが、ある時、王子さまにとって衝撃的な光景を目にします。それはたった一輪の珍しい花だと思っていた王子さまの花と似た花が、庭に五千くらい咲いていたのです。バラという名前の花です。王子さまはショックで泣いてしまいます。そこに現れるのが一匹のキツネです。王子さまはキツネから大切なことを教わるのです。ちなみに私の大好きな場面です。

校長 村手元樹

*サン=テグジュペリ(内藤濯訳)『星の王子さま』(岩波文庫、2017)ほか。