【朝礼の話⑫】晴耕雨読
2023.06.09

紫陽花が咲き始めました。

 

◇梅雨の楽しみ◇

今年は昨年より2週間ほど早く、5月中にすでに梅雨入りをしました。雨の日も多い今日このごろです。私の好きな四字熟語に「晴耕雨読」という言葉があります。晴れた日には外に出て田畑を耕し、雨の日には家にこもって読書をするという意味です。昔の悠々自適な生活を表した言葉ですが、現代にも通じます。晴れた日には外の空気を吸い、雨の日には外出は諦めて雨の音を聞きながら静かに本を読むというのも梅雨の楽しみ方の一つかなと思います。来週は夏の読書週間でもありますから、今日は読書についてお話しします。

インタラクティブ・リーディングとは?

読書にはいろいろな効果がありますが、今日は「インタラクティブ・リーディング」という側面について考えたいと思います。インタラクティブは区切って発音するとインター・アクティブ、双方向的とか対話的という意味です。「インタラクティブ・リーディング」は対話的読書と訳すことができます。読書と言うと、筆者から読者への一方通行、受け身というイメージもありますが、本を書いた人が一体何を言いたいのかを考えたり、ここは同感だけどここは自分の考えと違うなとか思ったりしながら自らの考えの形成に活かすというのは、かなりアクティブな、対話的な行為だと言えます。本を通してだったら絶対会えないような人とも話ができます。例えばアリストテレスのような、もうこの世にいない世界の偉人たちとも対話ができるのは、とても贅沢なことです。あるいは雨音を聞きながら夏目漱石とゆっくり対話して時を過ごすのも至福の時です。

兼好法師は『徒然草』のなかで、「ひとりで、燈火(ともしび)の下で本を読んで、昔の人を友達にするくらい、最高の楽しみはない」(「一人、燈火のもとに、文を広げて、見ぬ世の人を友とするぞ、こよなう慰む業なる。」第十三段)と述べています。

◇「書く訓練」は「読む訓練」に始まる◇

こうした対話的な読書は、人に伝える力を高める効果も期待できます。昨今の受験では小論文や面接試験などが増え、「書く力」「話す力」(要するに「自分を伝える力」)が求められています。ジャーナリストの森本哲郎さんは「書く訓練」は「読む訓練」に始まると言っています。なぜなら「読む」というのは、この文章は要するにこういうことを言っているんだなと自分なりの言葉で翻訳し直して理解していく作業だからなんだそうです。「読む」ことで無意識に自分の言葉で表現する「書く」訓練をしているわけです。

同様に「話す訓練」は「聞く訓練」に始まると思います。「聞く」という作業も相手が要するにこういうことを言っているのではないかと頭の中で自分の言葉で翻訳しながら理解しているからです。「聞く」ことで同時に「話す」訓練をしているわけですね。しっかりと「聞く」ことができる人こそがコミュニケーション能力が高い人だとVITA(びーた)さんも言っていましたね。

できるだけ多くの本に出会い、多くの人と対話をして、視野を広げていってください。

校長 村手元樹

*2023.6.7 全校朝礼