【朝礼の話⑱】すべてのことに時がある
2024.01.19

ふと空を見上げたら、美しい飛行機雲が架かっていました。

 

◇待て、そして希望せよ◇ 

今月のお話のテーマは「希望~夢に向かって」なのですが、「希望」という言葉で思い出すのが、アレクサンドル・デュマが書いたフランス文学の傑作『モンテクリフト伯』という小説の中に出てくる主人公の言葉です。苦難の人生を歩んだ主人公が最後、次のようなメッセージを若者に残して去って行く。「人間の知恵はすべて次の言葉に尽きることを忘れないでください。待つことと希望すること(待て、そして希望せよ。)」

 

◇希望が叶う「時を待つ」こと◇ 

希望すること、即ち、こうありたい、こうしたいとかいう気持ちが大切だと言うのはすぐ分かりますよね。で、「待つ」というのがこの言葉のポイントだと思うんですが、確かに希望すればすぐに叶うわけでもないので、「叶う時を待つ」ということが必要ですし、しかも「待つ」のが難しいのは、その時を人間は知ることができないからです。希望がいつ叶うか分かったら「待つ」ことはそれほど難しくはないかもしれません。

 

◇人は時を見極めることはできない◇

旧約聖書に「すべてのことに時がある」という有名な言葉があります。これは「コヘレト書」第3章「時の詩」と呼ばれる一節の中にあります。「すべてのことに時がある」で始まって、「生まれるに時があり、死ぬに時がある」「泣くに時があり、笑うに時がある。」「求めるに時があり、失うに時がある。」「戦いの時があり、平和の時がある。」というような調子で、対句の形式でずっと続いて、最後に、「(しかし)人は(その時を)初めから終わりまで見極めることはできない」と結んでいます。

物事が何かうまく行かない時に、あせったり、あきらめたりするのではなく、「いまはこういう時なんだな」と「時を待つ」ことも大切かなと思います。いまは分からなくても、後から振り返ると、とても大切な時間だったと分かることもあります。特に若者は短気なところがあるので、結論を急いで、かえって迷路に迷い込んでしまうことに気を付けなければなりません。

 

◇「果報は寝て待て」の本当の意味◇

最後に「果報は寝て待て」という諺を知ってますか? あれ、「何もしなくても待っていれば幸運が転がり込む」というようなお気楽な言葉のイメージもありますが、そうでもないみたいです。広辞苑によると「幸運は人の力ではどうすることもできないから、あせらないで静かに時機の来るのを待っていればよい」ということだそうです。要するに「人事を尽くして天命を待つ」と同じです。

「待つ」姿勢と同時にその「待ち方」、いかにして待つかというところに人間の知恵があるようです。

校長 村手元樹

*2024.1.18 全校朝礼