赤ちゃんから学ぶ ―令和6年度1学期始業式―
2024.04.08

令和6年4月8日(月)、校庭の桜が満開の状態の中、始業式を迎えることができました。校庭には他の春の花々も咲き乱れています。以下、新年度にあたって生徒の皆さんに伝えたメッセージをお読みください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

始業式での話

◇「主体的な学び」とは?◇

おはようございます。新しい年度が始まりました。気持ちも新たに毎日の学校生活に主体的に取り組んでください。ところで、こういう時、よく「主体的」という言葉が使われます。そして「主体的な学び」が重要だとよく言われます。それは確かだと思うのですが、では「主体的な学び」とは何?と言うと、漠然としていて使う人によって定義もまちまちで、今ひとつ分からない。そこで今日は私の考えを少しお話ししたいと思います。新学期の参考にしてください。

 

◇主体的な学びとは、自分で学習を楽しくすること◇

まず「学び」という言葉は「学習」と言い換えたほうが分かりやすいです。人間は「学習」能力が極めて高い動物です。もちろん広い意味での学習です。例えば寒い時、他の動物はせいぜい日向に移動して温まるくらいですが、人間は焚き火をしたり、暖房器具を作ったりして、学習能力によって生活を豊かにすることができます。

人間の本質が「学習」であることを最初に言ったのは、おそらく今から2500年前、孔子という人物です。孔子の言葉を集めた『論語』は、「学びて時に之を習う。亦説ばしからずや。」という、孔子が一番伝えたかった言葉から始まります。訳すと「学習することって、メッチャ嬉しいし、メッチャ楽しい。」ということです。「主体的な学び」とは何か?の答えは、ほぼここに表わされています。最終的には、いろいろと工夫して学習を自分でいかに楽しくするか(できるか)という点に尽きると思います。

 

◇赤ちゃんの探究学習◇

「自分で学ぶ力」の最も優れたお手本は、赤ちゃんです。赤ちゃんが母国語を習得する際の奇跡的な学習能力については、そのメカニズムを言語学者、心理学者、脳科学者など必死に追究していますが、いまだ解明されていない部分も多いです。赤ちゃんは、誰から教わるでもなく言葉を覚えます。大人のしゃべる言葉の音声や口の動きをひたすら観察し、その言葉の発せられた状況と結びつけ、仮説を立てて自ら声を出してみて修正する、試行錯誤を繰り返します。まさに探究学習です。そのたゆまぬ努力の原動力は、できなかったことができるようになる喜びだったり、世界が広がる楽しさでないかと思うのです。想像してみてください。赤ちゃんにとって、お母さんやお父さんは憧れの人だと思います。言葉を覚えたらその人とコミュニケーションできるわけです。学習が楽しいはずです。「僕、お母さんとしゃべっちゃったよ、今日!」とか「私、パパって呼んじゃった!」という感じじゃないでしょうか。

また赤ちゃんは間違えることを恐れません。たとえ猫のことを犬と呼んでしまうようなことがあっても、どんどん試して、体験の中で過ちに気づき、修正していけばよいのです。間違わなければ、修正することもできないのです。

 

◇学習の工夫の共通点◇

学校での学習にも同じことが言えます。どうしたら少しでも楽しくなるのか自分なりに工夫する営みの中にこそ主体性は存在すると私は思います。例えば同じ授業でもAさんは楽しいと感じ、Bさんは楽しくないと感じすることはよくあります。もちろん先生は、少しでも生徒に楽しいと感じさせる授業を心がけなくてはなりません。でも生徒が何の努力をしなくても楽しい授業は、そもそも主体的な学びとは言えませんし、本当の楽しさではないかもしません。

どう工夫するかは人それぞれです。でもいくつかの当たり前の共通点はあるかもしれません。予習をしてくれば自ずと理解度が上がって楽しくなるかもしれませn。授業をしっかり聞けば「ここ、なぜなんだろう」とか「もっと知りたい」という気持ちが湧いてきます。目標を持てば自ずとモチベーションは上がるし、試験勉強は一夜漬けより計画的にした方が心の余裕が生まれ、少しでも楽しめるかもしれません。

このように主体的に学ぶ力は、主体的に生きることに繋がっていきます。そんなことを意識しながら、新年度を始めて行きましょう。

校長 村手元樹