【朝礼の話㉑】「セレンディピティ」
2024.05.10

 

 

 

 

 

 

 

 

今年も出会えた、ヤマブキとツツジの花

 

 

◇「セレンディピティ」とは?◇

今日は、今月の朝礼の話のテーマ「出会い」について少しお話をします。皆さんは「セレンディピティ」という言葉を聞いたことがありますか? 「思わぬ発展につながる偶然の出会いとか発見」という意味です。科学やビジネスとかいろんな世界で注目されている言葉です。

その例でよく引かれる話が「ニュートンはリンゴが木から落ちるのを見て万有引力の法則を思いついた」という逸話です。エピソードが本当かどうかは別として、ここで言っているのは、重要なアイデアがしばしば偶然の出会いによってもたらされるという事実です。もちろん何の前提もなく「ひらめいた」ということではなく、行き詰まっていた考えが幸運な出会いによって突破口が開かれたということですね。実際ニュートンはたぶん発見以前にずっと天体とか地上の物体の動きについて力学的な考察をしつづけていたと思います。ニュートン以前にもケプラーとかガリレオとか大勢の科学者もいろいろと考えていた。そういう試行錯誤を踏まえてニュートンがある時「天体の間に働く力」と「地球が物体に及ぼす力」と「一緒のものではないか」という「ひらめき」があったのではないかと思います。

 

◇出会いは自分の中の点と点が繋がること◇

だから「ひらめいた」というより「点と点がつながった」と考えたほうがいいかもしません。自分の中に「点」がなければ出会いも無いわけです。

ビジネスの世界で有名なセレンディピティの例を挙げると、あるアメリカの化学者がより強力な接着剤を開発しようと試行錯誤をするうちに、偶然、よく付くけど簡単に剥がれてしまう失敗品が出来た。「使えないや」とて思っていたけれど、教会で聖歌集に挟んでいた栞(しおり)がポロポロ落ちてしまう経験をした時に、「あの失敗作が使えるかも」と思って開発されたのがポストイットという製品につながったそうです。

 

◇幸運な出会いに必要な「3つのA」◇

大発見・大発明だけでなく、私たちの日常生活にも小さなセレンディピティはあります。脳科学者の茂木健一郎さんが、「セレンディピティ」には3つの大切な要素(3つのA)が必要だと言っています。

一つ目はアクション(action)、行動を起こすこと。待っていても偶然の幸運には出会えない。いろんなことにトライしたり、体験したり、幅広い知識をつけたりすることで自分の中にたくさんの知識「点」を作ること。

二つ目はアウェアネス(awareness)、気づくこと。何か重要なヒントに出会っても、認識できなければ、出会ったことになりません。要するに点と点をつなげて考えること。そういう習慣を身につけるといいと思います。こういう力は小論文とか面接とか自由研究とかにも役立ちます。例えば国語の授業で『山月記』という小説に「人間は誰しも自分の性格をコントロールできなければ身を滅ぼす」みたいな内容が出てきて、「例えばどんなこと?」と考えてみるとよいと思います。社会で起こっている事件とも繋がるし、歴史上の人物と繋げてもいいですよね。織田信長とか。そういう力は本当に必要だと思います。

三つ目はアクセプタンス(acceptance)、受容する(受け入れる)こと。認識できても、自分のそれまでの価値観や世界観と違う、新しい考え方は、なかなか受け入れることが難しい場合が多いです。でもそれが自分の世界を広げてくれる、よい出会いになることもしばしばです。

皆さんがよいセレンディピティと出会うことを願っています。