◇第62回創立記念日◇
令和7年5月14日(水)、お天気にも恵まれ、今年もさわやかな若葉の季節に創立記念日を行うことができました。み言葉の祭儀を行なった後、今年3月に行なったイタリア研修旅行の報告の動画を見て、カピタニオの歴史を振り返りました。そののち、1年生が各出身中学校に、2・3年生の有志が各施設に日ごろの感謝の気持ちを込めて、お花を届けました。以下、式典で述べた私の挨拶を掲載します。
挨拶
◇この場所にいることの奥行きの深さと広がりを実感する日◇
まずは保護者の皆様、カピタニオゆかりの皆様、本日はお忙しい中、ご参加いただき、ありがとうございました。こうして皆様とご一緒に創立記念のお祝いできることをとても嬉しく思います。生徒の皆さん、「ブラボー!」と思わず叫びたくなるほど、素晴らしい全校合唱、本当にありがとうございました。準備段階から前向きに一生懸命取り組んでくれて嬉しいです。明るく伸びやかな「ラ・カリタ」の曲を聴いて、今年もこの季節を迎えることのできた喜びを感じます。
さて創立62年ということで、「へえ、この学校62年前に出来たんだ」という、出来事の歴史もありますが、人の歴史というか、この学校に携わった大勢の人たちの存在や思い・願いが積み重なって今があります。創立記念日は、この場所にいることの、奥行きの深さと広がりを改めて実感する日だと私は思います。
◇加藤恵先生のメッセージ◇
その具体例として、昨年はイタリアからやって来られた音楽の先生、Sr.カテリーナの話をしましたが、今日は加藤恵先生という英語の先生のお話をしたいと思います。恵先生はカピタニオの卒業生でもあります。2回生なので61年前、1964年に入学し、本校で過ごされ、大学卒業後、先生としてカピタニオに戻って来られて、長い間勤務され、今は神様のみもとにいらっしゃいます。厳しい中にも優しさと愛がある、そんな先生でした。
恵先生が生徒たちによく言っていたのが「Girls,be ambitious!(ガールズ,ビー アンビシャス)」という言葉です。これはもちろん「Boys,be ambitious!」を踏まえています。明治時代にクラーク博士が自分の学生たちに言ったとされる言葉で、「少年よ、大志を抱け」と訳されています。「大きな志を持て」ということですが、「大きな志」とは、どんなことでしょう?
◇加藤恵先生の愛読書◇
恵先生が愛読していた本が『赤毛のアン』です。生徒たちにもよく薦めておられて、私もその影響で読んで、今では自分自身の愛読書でもあります。恵先生と出会っていなかったら、今も読んでなかったかもしれません。たぶん粗筋はご存知でしょう。カナダの自然豊かな村が舞台です。年老いた兄と妹が2人で暮らしています。年を取った兄が、孤児院から男の子を引き取って畑仕事を助けてもらおうとする。でも手違いで11歳の女の子、アン・シャーリーがやって来てしまう。妹のマリラは孤児院に返そうとしますが、兄のマシューが躊躇しているので、マリラが「お兄さん、あの子が私たちの何の役に立つというんです?」と問い詰めると、マシューは思いがけないことを言い出したと書いてあります。「あの子が私たちのためにならなくても、私たちの方であの子の役に立てるかもしれんよ」とマシューは言います。「お兄さん、何を言っているんです。あの子に魔法でもかけられたんですか?」とか「すったもんだ」いろいろあって結局、引き取ることになります。しかしアンの存在によって年老いた兄妹の生活が一変し、活気づき輝いていきます。
◇「大きな志」とは?◇
「人を助けることでその人自身も幸せになる」というキリスト教的ヒューマニズムが『赤毛のアン』という小説のベースにはあります。例えば、こういうことが「大きな志」ではないかと私は思います。
『赤毛のアン』をこよなく愛していた恵先生の中にもそんなイメージがあったと思います。恵先生は足が不自由でした。表にはあまり出さなかったけれど、小さいころから、つらいことも多々あったでしょう。中学生の時、突然、近くにキリスト教の学校ができて、何か支えになればと思い、入学して、本当にカピタニオの先生方によくしてもらったと感謝していました。先生として勤めてた際もそんな志を大切にされていたと思います。
これは聖バルトロメア・カピタニオにも通じることですね。イタリアの片田舎で、教育を受けられない女の子を集めて小さな学校を始めた、それがカピタニオ・スクールの始まりです。これも「大きな志」です。そこから100年以上経って、太平洋戦争の後、日本のために何か役に立てることはないかということで、イタリアの修道会からシスターが派遣されました。最初は北陸のほうで福祉事業をしようとされていましたが、「瀬戸という町で女の子の通う高校が足りなくて困っています」ということを聞いて、「では作りましょう」と計画を変更して、作ったのがこの学校です。
いま皆さんの目の前にいるシスター方も同じ志を持って、日々皆さんに接してくださっていると思いますし、私たち教職員一人ひとりも肝に銘じなくてはならないと思います。
◇Girls,be ambitious!◇
そして生徒の皆さんも将来、人を助けることで、自分自身もその人たちと共に幸せな人生を歩んでいってほしいと思います。恵先生がおっしゃっていた「Girls,be ambitious!」というのは、こういうことかもしれません。「一粒の麦」の教えにも通じることではないでしょうか。
ということで、今日が「この場所にいることの、奥行きの深さと広がり」を実感する日になれば幸いです。この後、イタリア研修旅行の報告でも是非それを感じてください。
本日はまことにありがとうございました。
校長 村手元樹
同窓会マリエッタ会からのお祝いの花