琉球月見草 @感謝坂横の側溝
◇ミッションスクールに通う皆さんに特に読んでほしい本◇
おはようございます。再来週が夏の読書週間になりますので、今日は少し本の話をしたいと思います。
私は常々、「せっかくミッションスクールに来たなら、この本を読んでおくといい」と思う本がいくつもあります。というのは、そのような本を読む際、こういう学校で過ごした経験があるのとないのとでは受け取るものが全然違うからです。より深く味わうことができます。またその読書体験によって、現実の生活の体験も深まります。最近、本校のホームページのブログでもそういう本を紹介するコーナーを始めました。名付けて「せっかくBOOK」と言います。
◇『赤毛のアン』と「主の祈り」◇
その中でも一押しが、先日も少し触れた『赤毛のアン』です。いつかは絶対読んでほしい本です。言わずと知れた不朽の名作です。いまちょうどNHKのEテレで『アン・シャーリー』というタイトルのアニメ作品も放映され話題を呼んでいます。
「より深く味わえる」というのは、具体的に言うと、例えばこういうことです。小さな頃から、ちゃんとした教育も受けられなかったアンを、マリラという女性が引き取って育てることになります。そこで最初に教えるのがお祈りです。させてみると自己流の変なお祈りしかできない。お祈りもろくに教わってこなかったんだね、ということで、「そこのカードに『主の祈り』が書いてあるから、まずそれを暗記しなさい」というところから教育が始まります。そんなふうにさらっと書いてあるので、普通の読者が読むと漠然と捉えるしかないんですが、私たちは「主の祈り」がどんなものなのか、イメージできるんですね。こんな箇所がいくつもあります。
◇アン・シャーリーの魅力◇
『赤毛のアン』の最大の魅力は、何と言っても主人公アン・シャーリーの魅力です。好奇心旺盛、想像力や感性、そして表現力が豊かで、困難にくじけず、人生を切り開いていきます。マーク・トウェインというアメリカの有名な作家は、アンのことを「あの不滅のアリス以来、最も可愛らしく、最も感動的で最もゆかいな子」と絶賛しています。アリスとは『不思議の国のアリス』のとことです。
◇本が人生にもたらすもの◇
ところで、こうして本を読むことは人生にとってどんな意味があるのでしょう。最後に山本芳久さんという方が本について述べている文章を紹介します。山本先生は東京大学の哲学の先生で、カピタニオの先生方の勉強会にも参加してお話をしていただいたことがあります。
「一冊の書物を読んで人生が変わる。本当にそんなことがあるだろうか。どんな書物を読んだって、ものの見方はほんの少し変わるだけであって、苦しみや悲しみや不安に満ちた人生には何の変化も生じないのではないか。/どんなに優れた書物であっても、人間をいきなり180度変えたりはしない。変化を生じさせるとしても、ほんの少しの変化に過ぎないだろう。/だが、ある時にある書物に出会い、その「ほんの少しの変化」が生じるか否かが、人生全体で見れば、決定的な違いをもたらすものになることもある。/砂漠を歩いている人の歩む方向がほんの少しずれるだけで、その人はオアシスにたどりつくことができず、息絶えてしまうかもしれない。他方、ほんの少しの方向修正が生命を救うこともある。」
本とのいい出会いがあることを祈っています。
校長 村手元樹
*2025.5.29 全校朝礼