向日葵@散歩道
令和7年7月18日(金)、1学期の終業式を行いました。今年も厳しい暑さの日が続き、熱中症対策のため、終業式はオンラインで各教室に配信する形で行いました。以下、夏休みを前に生徒の皆さんに伝えたメッセージを掲載します。
◇夏休みは充電期間でもある◇
一学期本当にお疲れ様でした。夏休みが始まります。夏休みの過ごし方について、皆さん、それぞれに計画を立てていると思います。日々の学習はもちろんのこと、部活動やボランティア、学園祭準備などの活動、受験に向けた準備、そのほか比較的時間が自由になる夏休みなので、トライしてみたいことがあるかもしれません。それぞれに有意義な夏休みになることを願っていますが、私のほうから一つだけ、夏休みだからこそ、こういう時間も持ってほしいなということをお話しします。
それは「ひとりの時間を大切に」ということです。夏休みは、充電期間、英気を養う期間、リフレッシュの期間でもあると思います。普段の学校生活は本当に慌ただしく過ぎていきますので、一度立ち止まって、心と身体の休養を取り、次に進むために、今の自分のあり方を静かに振り返ってゆっくり過ごすことも大切です。
◇私が私自身と一緒にいる時間◇
この「ひとりの時間」は端的に「孤独な時間」とも言えますが、孤独にもいろいろあって、私の持っている「和英辞典」で「孤独」を引くと、2つの英単語が出てきます。1つは「solitude」、もう一つは「lonliness」という単語です。その違いの説明として、こんなふうに書かれています。「solitude」は、さみしさを含まない、「lonliness」は、さみしさを含む。この「solitude」のほうの孤独について、ハンナ・アーレントという女性の哲学者が、分かりやすい優れた定義をしています。
「solitude」とは、私が私自身と一緒にいる状態。物理的には一人でいるけど、二人でいる状態だともアーレントは言っています。ありふれた言葉で言うと「自分との対話」という状態でしょうか。そう考えると、「lonliness」は、私が私と一緒にいず(いられず)、誰かを探しもとめている状態だと言えます。人は自分が自分と一緒に居られないと寂しさを感じてしまいます。もちろん、私が私だけで完結せず、人を求める「lonliness」という気持ちも必要な感情です。人と交わる「交流」の時間と「孤独」の時間のバランス、往復運動が大切なのですが、私が今日、述べたいのは「solitude」のことです。自分と向き合って、これまでの自分、いまの自分、これからの自分のあり方を考えるためには、こういう、ひとりでゆっくりと過ごす、孤独な時間が不可欠だと思うからです。
◇デフォルト・モード・ネットワーク◇
こうした時間の重要性は科学的にも究明されていて、2,3年生の方には以前にもお話ししましたが、睡眠中やぼーっとしている時にも、脳は働いていて、頭の中に溜まった、様々な情報を整理してくれていることが分かってきています。その脳のはたらきは「デフォルト・モード・ネットワーク」と言われています。その状態の時、いい考えやひらめき、気づきが得られやすいと言われています。早起きして、散歩をするのもいいかもしれません。普段気づかない景色に出会えるかもしれません。
◇体験を経験に◇
最後にこのことを「体験」という観点から考えてみましょう。いろいろな体験をすること自体大切なんですが、それ以上に体験について振り返って考える時間を持つことも重要です。広い意味での体験です。人間日々体験で、学校に通うこと自体も体験です。一学期にも小さな事から大きな事まで、いいことも悪いことも本当にたくさんの出来事があって、お腹いっぱいになるくらい、いろいろ感じることがあったと思います。
「体験」と「経験」は同じ意味で使うことも多いですが、大雑把に言うと、「体験」は行動に重点を置いた言葉で、「経験」はそこから得た知識や学びも含めた言葉です。夏休みなどの「ひとり」の時間に、体験を通して感じたことを、是非「言語化」してみてください。書き出すといいのですが、頭の中で「考える」だけでもいいです。人間は言葉でしか考えることはできないので、「考える=言語化」ですから。ちなみに受験の際の報告書などでも、体験を言語化して文章にする能力が問われます。日頃から、そんな習慣を身につけておきたいものです。
身近で共通した体験の例で言えば、皆さん「ゴースト&レディ」を見て面白かったと感じた方も多いと思いますが、どんなところが良かったか、あの場面は何を意味していたか、とか気になったことを自分なりに考えてみるといいですね。あるいは、ナイチンゲールについて調べてみようとか、クリミア戦争ってなぜ起こったのだろうとか、是非深めて反芻して楽しんでみてください。
では、体調管理にも十分気をつけてお過ごしください。有意義な夏休みになるよう祈っています。
校長 村手元樹